スキーは楽しい(けつね)
いや私ね、ほんとダメ人間なんですよ。趣味なんて数えるほどしかないんですよ。4つか5つあるうちの3つか4つの趣味は身体をあまり動かさなくていいっていうか指だけが激しく動く趣味。腕は動かない。激しく上下しない。そこ! 勘違いするな!
そこって誰だよ。まあ趣味です。パソコンが趣味です。基本的に動きません。音楽鑑賞が趣味です。基本的に動きません。読書が趣味です。基本的に動きません。ティンホイッスルが趣味です。基本的に動きません。
ね、ダメ人間でしょう? 唯一動く趣味、それがスキー。私は夏じっとして動かず、冬活発になる人間。いやもうこれぐらいしか取り柄がないんですよホント。うまいのか? って聞かれると微妙なんです。
いや下手なんです。本当下手なんですよ。でもそのへんのハの字で滑ってる人よりうまいだろ? って聞かれるとそりゃ当たり前だと答えたくなるのが人じゃないっすか。そのへんのと一緒にするな、とか思わず口をついて増長した俺の本音がつい出そうになるんです。本当はちょっとニヤニヤしてるんです。えー? 少なくとも君よりはうまいかなぁ。ニヤニヤ。でも本当に下手。蔵王行ってみ? そんでスキースクールの先生方の滑り見てみ? 人間業じゃない。下半身が斜面に吸い付くように動く。あれはタコの化身。何か地の底とも天の天ともつかぬとても深いところから呼び声のするもの。
いや人間じゃん。タコじゃないじゃん。じゃんじゃん。とにかく私がよく一緒に比べる方々は大体みんながスキー指導員とか準指導員とかそういうレベルの方々。そりゃお前、今やサンデースキーヤーとなった自分と毎日滑ってるスキースクールの先生方と比べるのがそもそもおかしい。でもおいら十年くらい前にはそこで働いてたんんすよ。その時の俺の方が今の俺より全然滑れていた気もする。まだあのときの自分にすら追いつかない。もっと上手く滑れるはずだ。もっと、もっと。
そんなわけでほぼ毎週蔵王に出かけてるですよ。ここからが本編。朝から気合入れてバチコーイ! って服脱いだね。ジャージ着てスキーウェア着て(最近はアンダーシャツとか着なくてもスキーウェアがものすごくあたたかいのだ)、飯かっこんでコンタクトレンズつけてさっそうと出かけたね。
ツルン。ツルツル。おやおや今日は車がよく滑る。どうやら道路に積もった雪が凍ってその上に絹のようなきめ細かい雪が降り積もっている。これは慎重にいかねば。と思った矢先、軽トラが道路横の雪に突っ込んでいるのを発見。普段の俺なら何もせずに通過するが、今日の俺はすこぶる機嫌が良い。「大丈夫すか?」つとめて笑顔で話しかける。おじいちゃんはフガフガいってた。
「いやー、大変ですね」「フガフガ」言ってると、間もなくして近所の家庭用ブルドーザー(?)持ってるおっちゃんが登場した。「これで引っ張んべ」「おお悪ぃなぁ」喋れるのかよ。
無事軽トラは脱出し、俺は上機嫌で蔵王へ向かう。良いことをした後のスキーはまた格別だぜ。とか思っていたら30分ほど走った先で今度は大型の貨物車が道路に真横になって道路脇のフェンスに激突してた。さすがにこれはなんともならない。俺はスルーした。
さらに車を1分走らせた先で今度は軽ワゴンが横にお倒れになってた。よくある縦長のやつだ。ちょっとピザっぽい人がブヒブヒ言いそうな勢いで困ってるっぽかった。俺はスピードを落とし窓を開け、笑顔で「大丈夫ですかー?」。ブヒさん(仮)は「あ、大丈夫です。ドモスイマセン」と笑顔で返してきた。「じゃ、お気をつけてー」ブイーン。今日の俺は良い事しすぎだぜ・・・ふ。困ってる人に同情した風に困った顔を向けるより、笑顔を向けたほうが良い。ぼくはそうおもう。困っている時にふと見る他人の笑顔は、なんか救われるからだ。俺はそうして救われたし、そうして救いたい。さあ受け取れ俺のスマイルを! 「何あいつキモいムカツク」でFA。
さて蔵王についた。滑る。すべる。スベル!! 今日の俺は調子がちょっと良くないけど気分は良い。てかテンション高ッ! なにもの!? ってくらい高ッ! しかし俺よりテンション高いのがいた。俺がいつも滑ってるとこ「パラダイスゲレンデ」っていうんだけど、普段はリフト一本しか動かしてないからちょくちょく混むのね。するとまぁ、普通は自然と他人同士で相乗りになるんですよね。ボーダーとかスキーヤーとか関係なしにまあ普通は相乗りしますわな。だが相乗りしない人もいる。まぁ普通はいちいち悪いとか乗れとかいわないが。が。
男「ちょっ、なぁ〜↑にぃ〜↑アイツ!! 相乗りしろよ〜!!↑ ちょ、な〜んだよォ〜ッ!↑」
女「ねぇ〜↑混んでるってわかってんじゃん何様よアイツゥ〜!!↑」
その後もなんだかんだと大声でやかましいなにこのDQNバカップル。あきれを通り越して笑いを通り越してやっぱあきれた。ちょっと後ろから滑る様子とか見てたけどお前らの方が何様だよって滑りっぷりだったことだけは申し添えておくますです。ちょっと雪かけてやった。
せっかくのスキーで気分悪くしたりするのもったいないからね。
山頂から樹氷原コースを滑り降りようかなーと思ったら、ちょっと樹氷がきれいだったのと子供たちが樹氷にはしゃぎまくってちょっと邪魔だったので止まってた。そしたらお父さんっぽい人がおもむろにスキーはずしておろおろしだした。俺か。俺のせいか。
とかちょっと思ってたらなんか子供の名前しきりに呼んで樹氷原の方を一生懸命見てるではないか。あれ、これもしかしてやばいんじゃね? 子供、樹氷原に入っちゃったんじゃね? 説明すると樹氷原ってのはようするに樹氷の森で、そこは普通の森と同様迷いやすい。樹氷原はコース以外滑走禁止なのだ。
○○〜、○○〜! お父さん必死になってきた。周りの人も「あのお父さん子供捜してね? やばくね?」ってなってきた。おいおいこれはいよいよか? 俺も樹氷の間を見てみたけどいない。俺が樹氷原探しにいくか? いや昔ならともかく今やパンピーの俺がそういうことやっちゃだめだろ。パト呼ぶかパト。パトロール隊。
でもちょっとしたらすぐ見つかりそうな気もしたんでちょっと樹氷原入って探してみた。でもほんとにちょっとな。コースに沿って下に下りながら。本当は滑走禁止だし。
でさ、マンガかっての。俺が樹氷原入った途端子供が樹氷原からほっこり出てくるとか。マンガかっての。ここ大事なオチだから二回言っときますね。みんなホッっとなってんの。俺だけ笑いこらえてんの。自分ウケ。キモ。
で後は午後から横倉の壁(斜度38℃程度の蔵王一の急斜面)を何本か滑った。太ももがギチギチいったけどおもすれええ。途中どっかのスキースポ少の子供たちが転がり落ちるように滑っていったりしてちょっとほほえましかった。あとなんか外人と日本人のカポォが横倉の壁の上でなんか色々喋ってて、外人のカレシが壁降りてくから彼女は迂回コース回ってけみたいなことになってた。そんで喋り終えたら人目もはばからずいわゆるKISSとかいうやつしてんの。見てらんない。目をそむけながら俺「ウオッホン!」とか。ウオッホン! とかどこの洋画だよ。ありえないよ。ありえん! ありえん(笑)
総じて、かなり充実した蔵王のある土曜日のことであった。そうそう話変わるんですけどね、俺蔵王に来たときはいつも同じお昼ご飯食べるんです。
赤いけつねは正直かなり強いと思う。200円。